2009年6月 No.578 Volume 49 コピライト((社)著作権情報センター発行) KEYWORDコーナーに駒崎武一氏執筆「第3の流通 ペイパービューDVD(PPV-DVD)」が掲載されました。1/4
第3の流通 ペイパービューDVD(PPV-DVD)
(社)日本映像ソフト協会業務部次長兼事業課長 駒崎武一※
はじめに
1996年に登場したDVDビデオは、10年後の2005年には約3500億円の市場にまで成長した。
これまでのビデオ市場を牽引してきたのは、レンタル市場であったが、DVDビデオは最初からセル市場を中心に成長してきたことが特徴といえる。事実、DVDビデオレンタルは、2000年から登場したが、その時には、すでにセル市場は1000億円近い規模となっていた。しかし、皮肉なことにこの2005年をピークとして、DVDビデオのセル市場は縮小することになる。また、ビデオレンタル店の数は、既に1990年をピークに減少傾向にあり、2005年には最盛期の半数といわれる6000店を下回っていた。その後もレンタル店の減少傾向は続いており、このようなレンタル市場がセル市場の縮小をカバーできるはずもなく、結果的にDVDビデオ全体の市場規模も縮小を続け、2008年にはついに3000億円を下回る結果となっている。
DVDビデオ市場の縮小の一方で、デジタル技術の進歩とインターネットやブロードバンド接続環境の普及は、新たな映像ビジネスを生み出している。DVDビデオの視聴に代わり、IPTVの「アクトビラ」や「ひかりTV」、Webベースの「バンダイチャンネル」や「Show Time(ショウタイム)」、「NHKオンデマンド」などの映像配信サービスが利用されているとも考えられている。
このような中で、2006年に登場したのがPPV-DVDであった。PPV-DVDは、セルDVDよりも安い値段で購入できるが、視聴できる作品は収録されている一部に限られている。続きや他のエピソードなど、収録されている全てを視聴するには、追加料金を支払う必要がある。つまり、視聴する(View)分ごとに(Per)料金を支払う(Pay)DVDというわけである。追加視聴に必要な金額は、レンタル料金並に抑えられているが、視聴できる期間もビデオレンタル同様に一週間ほどに限られている。一週間を超えて視聴したい場合は、再度料金を支払えば、やはり一週間視聴できるようになる。このシステムを開発したのは、ヴィジョネア(株)で、現在、ソフトメーカー47社から提供を受け160タイトル以上が発売されている。
1.PPV-DVDの仕組み
このPPV-DVDは、どのような技術で実現されているのだろうか。その仕組みを見てみよう。
PPV-DVDの基本技術として利用されているは、DVDMAGIC※1という技術で、DVDビデオを暗号化したり、DVDの視聴回数、視聴日・時間などのデータを取得する、コンテンツの複製を防止するなどの機能を有している。これによりPPV-DVDは、購入金額で視聴できる非暗号化されたコンテンツと暗号化された課金コンテンツを、1枚のDVDビデオの中に混在させることを可能にしている。
課金コンテンツを視聴する手順は、以下の通り。
①DVDのメニュー画面にPPVコンテンツであることの確認が行なわれる。
②DVDビデオのメニュー画面もしくはパッケージ封入されている「ペイパービューコンテンツご視聴方法」に掲載されているパスワード発行サイトへ、携帯電話かPCからアクセスする。携帯電話の場合はQRコードの読み取りからもアクセスできる。
③パスワード発行サイトで、テレビ画面に表示されている再生中のDVD固有のPPVナンバーを入力し、決済手続きを完了し、パスワード(6桁)を取得する。決済は、携帯電話の場合は携帯の使用料金とまとめて支払うことができる。PCの場合はクレジットカードかプリペイド型電子マネーのWebMoneyで行なう。
④テレビ画面に戻り、パスワード入力画面に移行し、DVDプレーヤーのリモコンからパスワードを入力し決定ボタンを押す。PPVナンバーとパスワードが照合され、認証されると再生が始まる。
⑤視聴期間は、コンテンツ提供者が設定しており、通常一週間とされている。視聴期間内であれば、何回でも追加料金なしにパスワードを取得することができる。
⑥視聴期間終了後に、視聴する場合は、再度課金決済を経てパスワードを取得することになる。
DVDビデオは、リード・オンリー・メモリー(ROM)であり、パスワードを保存することができない。このため、PPVナンバーは視聴の都度変更され、PPVナンバーとペアとなるパスワードもその都度変化することになる。視聴の都度にPPVナンバーを変更して表示するところに、DVDMAGIC技術が使用されている。また、視聴期間や視聴回数の管理、設定は認証・課金決済サーバー側で行なっており、DVDプレーヤーの時刻設定を変更しても無効となっている。
※1 DVDMAGICは、DVD-Videoの機能とインターネット接続機能を結びつけて実現するさまざまなサービスの総称。
DVD-Videoにはインタラクティブ機能を実現するためのさまざまな機能が規定されており、DVDMAGICはそれらを複雑に組み合わせてコンテンツへのアクセスをコントロールできるようにしている。
コンテンツへアクセスするためのキーの配布をインターネットを利用して行なうことで、アクセスをサーバ側で管理したり、視聴状況をモニターすることができる。
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